「で、どうだったの?」

由加里がニヤニヤ笑いながら問いかける。

「なにが?」

「なにがじゃないわよ。なにか進展はあったのか、って訊いてるの」

「なにもないわよ」

真っ白なペットボトルの飲み口から唇を離して千珠が言った。

由加里が大げさにため息をつく。

ヨガの呼吸法のように、ゆっくりと長いため息を。

「まぁ、そんなことだろうとは思ったけどね。でも、部屋までは行ったんでしょ?」

「うん、行ったよ」

「あっ、わかった」

由加里が得意げに言った。

「どうせ、あのチビに邪魔されたんでしょ?」

違う? と、目で問いかけてくる。