「じゃあ、あたしのことは? 好き?」

「ああ、嫌いなわけないだろ。どーしたんだ、急に?」

武が階段の途中で振り向いて訊き返す。

「んー、べつに。なんでもない」

千華が軽く微笑んで、武の背中に飛びついた。

そのせいでバランスを崩して、階段から落ちそうになる。

「おい、危ないだろ」

「うん、ごめん」

千華が腕にぶら下がるように身体を押しつけて下から見上げる。

「ねえ、今日一緒に寝てもいい?」

「ああ、いいけど」

武が首をかしげながら答えると、

「じゃあ、パジャマに着替えてくるね」

そう言い残して、自分の部屋に走っていった。

ちらりと見えたウサギの瞳は、どれも赤く透き通っていた。