ドアがきしんだ音をたてて、ゆっくりと開いた。

「武、誰かいるの?」

千華が首だけ出して中を覗く。

そして千珠の顔を見て、「あっ」と小さく呟いた。

「こんばんわ、おじゃましてます」

千珠がぺこりと頭を下げる。

千華はそれに答えることなく、武の顔を見つめていた。

「それどうしたの?」

武を指差して千華が言った。

「ああ、貰ったんだけど。どうだ、似合うか?」

「ふーん、いーんじゃない」

ぶっきらぼうに千華が答えた。

「じゃあ、わたしそろそろ帰ろうかな」

居心地悪そうに千珠が呟く。

「ああ、じゃあ近くまで送っていくよ」

「うん、ありがと。でも、大丈夫だから」

千珠が武の後に続いて部屋を出ると、

「さよなら」

背中に向けて、千華が言った。