スピーカーから流れる歌声が止まり、由加里が取り替えたもう一枚のCDが歌い終わる頃、やっと千珠の頬は乾き始めた。

「わたし、最近泣いてばっかりのような気がする」

「そうだね」

由加里が小さく呟いて、リモコンで再生ボタンを押した。

軽く音をたててCDが回り、小さく音が聴こえてきた。

最初にピアノの音が響き、少し遅れてかすれた歌声が重なった。

「これって、日本人? 日本語だよね?」

千珠が訊くと、

「さっきから聴いてるじゃない。今更なに言ってんのよ」

由加里がおかしそうに笑って言った。

「なんか泣いてるのに夢中で、声までは聴き取れていなかったみたい」

由加里は笑いながらビールを飲み、タバコに火をつけた。