「おかえり」

ドアを開けて階段をあがろうとすると、上から千華が顔を覗かせた。

「ああ、ただいま」

ギシギシと階段をきしませて、千華の前を通り過ぎるついでに、頭にポンと手をのせる。

「どこ行ってたの?」

「ん、ちょっとそこまで」

武は適当にはぐらかして、自分の部屋に向かう。

振り返ると、千華がじっと見つめていた。

遊んで欲しいのだろうか?

ふとそんな気がして手招きしてやると、ウサギのスリッパを動かしながら千華がうれしそうについてきた。

二匹のウサギの瞳は赤く輝き、白い毛並みは少しだけ汚れていた。