時々ジンがわざとらしくドアを軽くノックして、ちょっぴり押し開けた隙間からニヤニヤとした顔を見せること以外は、特に何の問題もなかった。

それに引き換えレイラは、ほとんど武の部屋に来ることはなくなっていた。

それでもどうせ、ジンと二人でテーブルを挟み、彼の土産話を肴(さかな)代わりにして酒でも飲み交わしているのだろう。

レイラはきっとおかしそうに唇をゆがめながら、「うんうん」と相槌を打っては扇をパタパタと扇いでいる筈だ。