部屋のドアは少しだけ開いていて、隙間から見る限り中は暗かった。

いないのか?

疑問を浮かべながらドアを開けると、ベッドにもたれて床に誰かが座っていた。

千華が抱えた膝に額(ひたい)をつけて、暗闇の中うずくまっていた。

「千華?」

壁際(かべぎわ)にある電気のスイッチに手を伸ばしながら、名前を呼んでみた。

パチン、乾いた音とともに、天井の裸電球が光を放つ。

それでも千華は、顔を上げることなく、

真っ直ぐに流れ落ちる黒髪のシェルターの中から出てこようとはしなかった。