「おかえり、どうだった?」

武の帰りを玄関で待っていたかのように、

タイミングよくレイラが声をかけてきた。

武はちらりと横目で見てから、黙って前を素通りする。

「千華が部屋で待ってるよ」

部屋に向かおうと階段を上りかけた武に、レイラが言った。

次の段に伸ばしかけた足を止めて振り返るが、

もうすでに彼女の姿はどこにも見当たらなかった。

武は追いかける気力もなく、そのまま階段を上り、廊下を歩いていく。