ランチを食べ終え、そそくさに店を出た。



「誰にも訊かれたくなくて…」



駅前の小さな公園のベンチに腰を下ろす。



どんよりとした空。


吹き付ける風は冷たく…私たち以外公園に人影はない。




公園前の自販機で購入した温かい缶コーヒーを飲みながら…佳世さんが話を始める。




孝典さんの人には言えない過去の話。




「孝典さんの父親は殺人犯なの…」



「えっ!?」




「…元々…孝典さんの父親は裕福な育ちで…大手のアパレルメーカー『ブラックベリー』の藤ヶ谷社長とは親戚同士なの。でも、会社が倒産して…生活は一転。苦労したらしいわ…育ちのいい孝典さんの父親はお人好しで…昔ながらの知り合いに騙されて多額の借金を背負ってしまったらしいの。それを逆恨みして…殺してしまい…刑務所に…残された孝典さんは親戚からも絶縁されて…」