俺は革靴を脱いで、理沙ちゃんを起こさないようにそろりと部屋に上がった。



「…杏…」



「ん…何?」




「俺はお前にプロポーズしたが…やはり…結婚は出来ない…別れてくれ」



「孝典…さん?」



突然のコトで、杏は鳩が豆鉄砲を食らった表情になった。



「やっぱり、理沙のコト?」



「理沙ちゃんは関係ない…」



「…君は俺のせいで職を失った…その償いとして君に職は斡旋する…」




「…里沙は貴方のコトを父親として…」



「…残酷なコトを言うけど…俺は赤の他人の子供を育てる自信がない…」



「・・・私…貴方に甘え過ぎたのかな?」



杏は俺を責めずに自分を責めた。