「孝典君にずっとそれを伝えたくて…マンションに足を運んだが…不在が多くて…丁度…君の姿を同じ料理店で見かけて…郁弥に頼んだんだ…」




「彼は留維さんの…」




「…行きずりの女が産んだ子供だ…彼は元・家具メーカー『シーナ』の営業マン。アパレルの仕事に携わり…まだ6年目だ…何れ…俺の後釜に就かせる為に…今は秘書をしている。まぁ、孝典君が…ウチに来れば…新規事業部で一緒に仕事にするコトになるな」




前席に座っていた郁弥さんが後ろを振り返り俺と目を合わす。




会社を退職しようと考えている俺には美味しい話だ。




「真剣に考えてくれないか？」




「でも、俺は…」




「…俺は君の父親代わりだ。そう…君のお父さんの墓前で誓った…だから君を放っておけないなんだ」



父さんが亡くなっても…


父さんの犯した罪に囚われ続ける俺に親身になってくれる留維さん…



「だから…真面目に考えてくれ…孝典君」




「…判りました」