嫌か、と問われれば

残念なことに嫌ではないと思う自分が居る

その対象がこのじゃじゃ馬であることが無性に腹だ立つのだが

視線を向けた先にいるしるふは、気持ちよさそうに肩を上下させている

その姿と自分に思わず息をつく

歓迎会をしていたバーからタクシーで約15分

病院近くの古い古いアパートの前で停車する

一応妙齢の女、こんなセキュリティの危うそうなアパートにしなくてもいいんじゃないのか

と思ったのは一瞬

「立花」

ついた

声をかけたって起きるはずがない

ので、タクシーの座席に入っていた何かのパンフレットを丸めて振り下ろす

「…痛ったい!!」

もやは条件反射

一発でしるふは目を覚ます

「黒崎先生!痛いです!!」

「うるさい。さっさと降りろ」

「ええ。あ、はい」

言われるがままに下りて振り返れば自分の住むアパート

「って、あれ?黒崎先生?」

寝起きの頭では送ってもらったなどとは微塵も思わない