「まあ、別にいいけどさあ」

腕の中で少し不機嫌そうに、けれどどこにも行こうとしないしるふに

自分より彼女の方がよほど猫らしいとふと思った

こうやって捕まえておかなければ、時々近くにいることを確認しなければ

いつだってするりとどこかに行ってしまうのは、彼女の方なのだから

けれど、決まって少しすると自分のところに戻ってくるのも知っている

あの猫と違うのは、なでようと手を伸ばしてもその手をすり抜けていかないところだろうか

気が付くと海斗の腹の上で気持ちよさそうに丸まっていたあの猫のように

海斗を振り回しつつも、構わずにはいられないのは

相手が彼女だからだからだろうか

腕の中にある柔らかな髪をなでながら、そんなことを思った













黒崎海斗の憂鬱2    -完-