「ふーん」

それは決してほめてはいないということか

まあ、海斗が直球の褒め言葉を投げてくるなんてこの3年で何回あっただろうか

「ま、そのよくも悪くも正直なところが海斗のいいところよね」

とか自分に言い聞かせてみる

「あ、そうだ、海斗」

心地よかった毛布から抜け出しつつ

「昨日、ありがと」

ジャケットかけてくれたの海斗でしょ

記憶は曖昧だけれど、そんな器用なこと自分がするとは思えない

「これを期にもう少し酒との付き合い方を検討した方が」

「海斗の肝臓が、これを期にもっと働いてくれるっていうなら考える」

交差するのはブラウンの瞳と漆黒の瞳

「遺伝て言うのは」

「遺伝のせいにしないのー。私、実はちょっと疑ってるのよねー。本当は海斗ってそこそこ飲めるんじゃないかって」

でも飲めると面倒なことがあるから飲めないってことにしているのではないかと

なにせ面倒だからと自分に近寄ってくる女性からの好意にアンテナを張るのをやめた男だ

「失礼だな。確かに自分の限界がわかるほど飲んだことはないが」

いつだって記憶と時間がとんでいるのだから、これは弱いと確信している