そっと肩まで引き上げた毛布をそっとなでる

「ホント、嫌味なくらいさわり心地抜群」

嫌味ー

とつぶやいた言葉はしんと静まり返った部屋に消えていく

形のある未来が欲しいわけではない

いつか、なんていらない

でも、約束も、いらない

欲しいのは、海斗の本心だ

海斗がそうしたいと願った時に、隣にいられればそれでいい

自分でも驚くほどに無欲になったものだ

でもそれは海斗にそれ以上のものを与えられているから

それが自分が心から望むもので

きっとそれを与え続けてくれるのは、このいつまでたっても左側を向いて寝る癖が抜けない、

いつだってその背中しか拝めない海斗のせいだ

ゆっくりと寝返りを打てば変わらない海斗の背中

手を伸ばせば届く距離にいて、きっとそれは要らない心配をしなくても変わらないと思うけれど

それでも時々ふと不安がこみあげてくる

そう思っているのは自分だけで、わかり合えているなんてうまくいっているなんて

ただの錯覚ではないのかと

目に見えないからこそ不安になる