「酔っ払いと入る趣味はないんだ。悪いが」

廊下に響く低い声と

「よってない」

少し怒ったような声

「酔ってる」

「よってないもん」

15㎝ほど下から見上げてくるブラウンの瞳は

いつだって迷うことなく見返してくる

それが新鮮だったのは、もう3年前のこと

いつの間にかその瞳は自分の前で色々な色を映すようになった

自分しか知らない色も

それが少しうれしいなんて誰にもいいはしないけれど

ましてや本人になんて口が滑ってもいうことはないのだけれど

けれど、その瞳がそうやって自分の前でころころと色を変えるうちは

この手を離すことはしない

形がいい、と思っている頭に手を乗せてやればそれだけで満足そうに笑う

何が、黒崎病院のマドンナだ

誰が一体そんな二つ名を考えたのだろうか

「しるふ」

「ん」

「寝るか」

え、おふろ

しるふのつぶやきを無視し、抱き上げる