「じゃあ、帰りね」
「ああ…うん」
「礼央、」
「んー…?」
「あ、いや、何でもない」
俺と梓は違うクラスだから、教室の前で別れた。
別れた時、梓が不機嫌そうな顔をしてた気がしたけど…気のせいか。
「礼央、宿題見して!」
「んー…」
「お前、何ボーっとしちゃってんだよ」
友達に話しかけられている声が右から左へ…。
全然頭に入って来ない。
何気なく窓の外を眺めていると、見つけてしまった。
上村愛生―――。
体育の授業の準備をせっせとしている。
それも、あんな小さな体で大きな器具をひとりで…。
周りは誰も手を差し伸べようとしない。

