善いヴィッチ

返答に困り、俯く。

「何だよオイ!」

笑いながら、僕の背中をバンッ!と叩く。

「てめぇマジ童貞かよ!しょうがない奴だなぁ♪」

そんな大きな声で言わないで下さい…。

飲みの席は、すっかり笑いに包まれる。

「お前何歳?大学生にもなって何で童貞?さっさと捨てろよなぁ」

物凄く馬鹿にされてるんですけど。

自己嫌悪に陥って、ドヨーンと翳を背負っていると。

「しっかたねぇなぁ」

里奈さんはグイと僕の手を引っ張って立ち上がらせた。

「え…何…?」

目を丸くして見上げる僕に。

「そんなもん後生大事に持ってんじゃねぇよ、さっさと捨てに行こうぜ♪」

発言に似合わない屈託ない表情で、里奈さんは爽やかに笑った。