善いヴィッチ

放課後。

「でさぁ、海行った時にナンパしてきたチャラい大学生がKYで~」

佐々木さんは延々と、夏休みの武勇伝を僕に語って聞かせていた。

もう二学期に入って三度は聞いた、重複している話も含む。

佐々木さんが、ちょっとばかりオツムが緩いのはクラスでも有名だ。

他の友人達は、『あーあー、また若本が佐々木に捕まってら』ってな顔してさっさと教室を出ていく。

帰宅したり、部活に行ったりしてるんだろう。

特に部活をやってる訳じゃない僕は、時間に縛られたりはしていない。

だけど、このまま佐々木さんの話に付き合ってあげる理由もない訳で。