私とイヤホンの大きな事情。

詩音はむくっと起きあがると、走り出した。

コンビニのほうへ向かって足を動かしていく。

私の声には気付かなかったんだね。

あんな小さい声だから当たり前かもしれないけど、

ムシされたみたいで、あの時みたいで、

なんだか寂しい。

「……あーもう!こんなこと考えない!」

私はそう言ってのびをすると、立ちあがって壁際にある本だなのほうへ歩いた。

そして、本棚をゆっくりと眺める。

今まで読んできたもののなかで、気に入った作品やおもしろかった作品をここにいれてるんだ。

ここには30冊ぐらいしかないけど…。

クローゼットの中に、あと300冊以上はあるとおもう。

絵本、文庫本、マンガ、単行本。

昔話、童話、ラブストーリー、冒険のお話。

いろんな本があるんだ。

そして…

私と同じ、ひきこもりの話も。



「今日は、コレ読もう」



私はつぶやいて、そのひきこもりの話がかかれている本を本棚から抜いた。

コレは、この本は、特別。

普通の本ではあるけど、私にとっては、

ものすごく大切な本なんだ。



ベッドに腰掛けて、表紙をなでた。

こういう文庫本の大きさっていいよね。

ちょうどよくて、手にしっかりおさまる。


私は、表紙に描かれている、草原の中でたたずむ長い髪の女の子を眺めた。

ステキだな。

外に出られるってコトがまず、スゴィよ。

ステキ。


私が表紙をめくった瞬間、


…詩音が帰ってきた。

玄関のドアが閉まる、音がした。

私は本を閉じて

詩音の近づいてくる足音をゆっくり聴いた。