ガチャ…
「あー…くそねみぃ…」
「っ」
突然開いたドアと、低く掠れた声に体をびくりと揺らしてしまった。
正体は両方とも、雨宮くんだった。
いつもちゃんとセットされている髪の毛は寝癖でピョンピョンと跳ねている。
格好も、上下グレーのスウェットで、明らかにリラックスモードだった。
外見は軽そうに見えても、きっちりしているイメージはあったから、何だか拍子抜け。
欠伸をしたあとに少しだけ潤んだ瞳に捕まって、言葉が詰まる。
「……おう、酔っ払い。今まで寝てたんだってな。贅沢な奴め」
「雨宮くんに言われたくない」
腕を組んで応戦した…つもりだったんだけど、やっぱり本調子じゃないせいで、項垂れそうになってしまった。
恐ろしすぎる二日酔い。
この辛さは忘れないでいよう。
きっと、自分に取ってプラスになるはずだ。
「雛と湊は?」
「雛は用事あるって出てった。湊はバンドの子たちで集まるんだって」
そう答えた雨宮さんは、エプロンを取って食器棚の取っ手に掛けた。
雨宮くんは眠そうに欠伸をしながら席へとつき、それに続いて雨宮さんまで腰を下ろした。
気付けば私一人が立っていて、2人の視線が一斉に突き刺さった。
「早くお座りしなさい、いただきますってするよ」
幼稚園の先生みたいなことを言い出した雨宮さんの重たい視線に負けて、目の前の椅子に腰かけた。
…頭痛い。
でもお腹は鳴る。
今の私、大分忙しい。
「では皆さんご一緒に、」
「「いただきます」」
2人の声が綺麗にハモって、私は完全に出遅れたけれど。
「…いただきます…」
一応言わせてもらってから、箸を手に取った。
