事の発端は、檜山が誤って酒を飲んだことだった。


初めに気付いたのは湊で、気付いたときにはもう遅かったらしい。


雛の作った変な酒を飲んだ檜山の顔は、みるみるうちに赤くなっていった。


と、思ったら突然立ち上がって、




『…うふふふ』



とか笑い出す始末。


みんな、開いた口が塞がらなかった。






『おい、大丈夫か?』


『ふふふふ』


『とりあえず座って水飲め』


『ふふふふふふ』




朔兄の言葉が届いていないのか、ただ口元に両手を添えて、笑う檜山。


完全におかしい。


その場にいた誰もがそれを察していた。





『さっき初めて笑ったとこ見たって盛り上がってたばっかりなんだから空気読めよお前…惜しみなく笑い過ぎだろ』


『…ふふふふふふふ』


『こえーよ』




俺の声も、もちろん届かない。


湊が声をかけても、雛が声をかけても駄目。


どうしたもんかと思っていたら、今度は突然真顔になった。


全員が咄嗟に構えた瞬間だった。





『……にゃん』


『『『『……。』』』』




嬉しそうに、もじもじし始め、そして―――





『おかえりにゃさいませ、寂しかったにゃん』



檜山は、猫になった。