ぶっきら棒な声に視線を移すと、今度は雨宮くんが近寄ってきた。
偉そうに、上から見下ろされてしまった。
「雨宮望(のぞむ)ですよろしくどーも」
「知ってます」
「そうかよ」
「あ、でも下の名前は今初めて知った」
「まじかよ」
雨宮くんと意味不明な握手を交わしていると、キッチンからまた入間さんと梅田さんが出てきた。
入間さんは鍋を、梅田さんはボールいっぱいに入った鍋の食材を持っている。
「お前ら座れよー!始めんぞー!」
梅田さんに続いて、今度は雨宮さんが出てきた。
…また、鍋を持っている。
しかも両手に。
「美月ちゃんの好みが分からなかったから、今日はキムチ鍋と水炊きとトマト鍋の3種類作っておいたよー!」
入間さんの言葉に、目を丸くしてしまった。
…本当だ。よく見たらガスコンロが3台並んでる。
私、キムチ鍋と水炊きとトマト鍋いっぺんにやったことないや。
と、いうか、トマト鍋に至っては食べたことすらない。
…普通なのか?
家族が多い家では、普通のことなのか?
「絶対鍋3つ作る必要なかったから。食い切れねーから絶対」
「のんちゃん煩い…」
「作る前に言ってよ!そういうのはさ!」
…普通のことではなかったらしい。
雨宮くんに食ってかかった梅田さんと入間さんを見て、意味もなく頷いてしまった。
