「……、ま、言いたくないなら仕方ないけど」
「、」
視線を感じなくなって、見ると、黒髪様は不満げに前を見据えていた。
…おお。
意外にあっさり引いてくれた。
今回は話つめられると思ったのに。
きっと、私の何も聞くなオーラが伝わったんだろう。
それを察してくれたのだろう。
大人だなぁ…
私の気持ちを、汲み取ってくれたのだ。
「誰にでも言いたくねーことの一つや二つあるからな」
「黒髪様にもありますか」
「あるある。無修正のエロDVDの隠し場所とか」
「最低ですね」
「まぁベッドの引き出しに普通にあるんだけど」
「聞いてません」
目を合わせないままでも、にっと笑ってくれた黒髪様を見て、妙にほっとしてしまった。
私、多分すごく失礼なこと言ったのに。
我儘な態度をとったと思うのに。
怒らないで、笑ってくれるんだ。
黒髪様は、すごくすごく優しい人なんだと思う。
見ず知らずの私を家にあげてくれて、ご飯まで恵んでくれた。
それだけでも十分なのに。
勝手に倒れた私を気にしてくれて、理由を聞いてくれて。
答えられなくても、怒らないでくれた。
冗談で誤魔化してくれた。
器がでかいってきっと、こういう人のことを言うのだ。
