おうちにかえろう

「……、」



…え?


と、声に出さなくても、表情で言ってしまっていたかもしれない。


黒髪様が、言葉を繋げる。





「悪いけどかなりの衝撃だったからね。倒れてた理由も聞けないまま変な券置いて帰るし」


「変な券て…」


「気にならない方がおかしいだろ。ここのこともそうだけど。最初いかがわしい店だと思ったわ」


「いかがわしいだなんてとんでもにゃい」


「やめてくんないそれ…調子狂うから」




そんな、心の底から止めてほしいみたいな眼差しで見ないでください。


せっかく気持ちに蓋をしてにゃんにゃん頑張っているのに。


我に返ってしまいそうです。





「好きな漫画の続き気になってんのに、何だよ今月休載かよ続き読めねーじゃんみたいな気分だった」


「訳分かりません」


「そーかよ悪かったな」



不機嫌そうに眉を顰めた黒髪様は、財布から特別優遇券を取り出して、私に差し出した。




「…で?よく分かんねーけどサービスしてくれんだろ?」




にっと笑われて、眉を上げてしまった。


そうだ、そうそう、サービスサービス。


私の命を救ってくれた、お礼をしなければ。




「では、気を取り直しまして…本日黒髪様ご一行様を担当させていただきます美月だにゃん、よろしくにゃん」


「…おい、黒髪様って何だ」


「この券のご利用で、ドリンクの方が全て飲み放題とにゃります。何頼みます?…あ、にゃに頼みます?」


「もう止めちまえよ使いこなせねーなら」




…そんなわけにいかないんですってば。


ネコ耳をつけて、このユニホームを着て、にゃんにゃん言わないと、ここでは働けないのですから。


後付けでも何でも、とりあえずにゃんにゃんです。





「じゃあ俺生中!」


「じゃあ俺もとりあえずそれ」


「ありがとにゃんにゃん」