「…、大丈夫?」
大丈夫なことは何となく分かっていたけれど、一応聞いてみた。
さっきから、賀上が動かない。
仕方なく、肩を掴んで身体を離すと、何ともまぁ間抜けな顔をしていた。
目も口も開いたぶっさいくな顔。
顔の目の前で手をヒラヒラとさせてみても、反応もしない。
「…雨宮くん…男だったんだね」
「…意味分からん」
檜山は、驚いたような顔で腕を組んで、「ほお~」とか言いながら頷いていた。
いや、意味分からないから。
そもそも、男だったんだねって何だ。
俺のことなんだと思ってたんだこの女。
「まーちゃん大丈夫?…まーちゃん?」
「……はっ!!!」
檜山が肩を叩いて顔を覗き込んだおかげで漸く正気を取り戻したらしい賀上は、これまた物凄い顔で声を張った。
一度大きく旋回した視線は、すぐに俺を捉えて、奴の見開かれた瞳に自分が映った瞬間にまた勝手に溜息が出た。
「…だいじょーぶですか、賀上サン」
嫌味を込めて、そう言ってみたんだけど。
だって、絶対何かしら文句を言ってくると思ったから。
…なのに。
「……………………はぃ………」
…返事はあまりに素直で、小さな声で……顔は真っ赤で。
予想外の反応に、拍子抜けして、目を丸くしてしまった。
