掟って聞くと無意識に身構えてしまうのは私だけだろうか。
だって、え、掟?
掟って…
「……家訓的な何かですか…?」
「まぁそんなもんよ」
…どんなもんなんだ。
「別にそんな身構えなくても大したもんじゃねーから」
「、え」
雨宮くんはまた全てお見通しだったらしい。
構える私を見てそう言うと、腕を組みながら思いくそ溜息をつかれた。
あ、呆れている。
なぜか分からないけれど、私のこと、物凄い呆れている…
「そうそう、ほんと大したことじゃないんだけど、俺ん中では大事なこと」
「…、…それって大したことなんじゃ…」
「少なくとも身構える必要はねーと思うけど」
また、にやっと意地悪な笑み。
雨宮さんにそんな風に笑われると、どうしていいのか分からなくなる。
だから私は、昨日から借りっぱなしの雨宮くんのスウェットの裾を、ぎゅっと掴むことしか出来ない。
「…あ、ちょっと待ってて、持ってきた方が早いと思うから持ってくる!」
いい考えが思い付いた、とでも言わんばかりにパっと笑顔を咲かせた入間さんが、台所へと駆けて行った。
その後姿を見て、更に不信感が募る。
(……、持ってくるって何を……)
その質問は結局、言葉となって出てきてはくれなかった。
