『―――あ、もしもしお電話代わりました。管理人させてもらってます雨宮と申します』


『!!!』





また、闇に呑まれそうになっていたとき、突然手元が軽くなった。



と思ったら、私が話していたはずの携帯を、雨宮さんに奪われていて、あろうことか、あの女の人とそのまま話し始めたのだ。



誰にも聞かれないように、外に出て話していたのに、なぜ。



これにはさすがに動揺してしまって、



久しぶりに、必死になってしまった。






『ちょっ…か、返してください困ります…っ』


『ええ、娘さんを今日からこちらで預からせていただこうと…はい。そうなんです』




電話を持つ手と反対の手で頭を掴まれてしまったら、私の手なんてもう届かない。



にっこりと笑みを浮かべられても、安心なんて出来ないし、任せられもしないし、一刻も早く電話を返してほしいという気持ちは変わらない。…どころか、増す一方だ。



そんなことはお構いなしと言わんばかりに、雨宮さんの視線は、私を飛び越えた。



彼の腕の長さを恨みつつ、それでも諦めずにいると、






『確保!!』


『ぎゃ!!』





どこから出てきたのか、入間さんと雨宮くんに拘束されて、動けなくなった。







『…それでですねお母様、こちらに住むにあたって…』


『わーーー!!!ま、待って…!!!』





私の叫びは虚しく澄んだ空に吸い込まれて、消えていった。



ピシャン、と音を立てて閉められた玄関のドア。





『……。』




謎の連携プレイに、固まるしかなくなってしまった。