窓の外は、真っ白だった。
 夕方から降り始めた雪は、夜明け近い今もまだ降り続いていた。あの人との出会いも確かこんな雪の日だったな、と思い出し、何故か少し可笑しくなった。
 後ろを振り返ると、隆志(たかし)が、スースーと、静かに寝息を立てていた。隆志は、まだ一歳の赤ちゃんだ。寝るのが仕事。その可愛らしい寝顔を見ているだけで、私はとても幸せな気持ちになれる。
 私は、隆志を起こさぬように、注意しながら、戸棚を開け、お気に入りの茶色のダウンを取り出して、それを羽織り、あの人と付き合い始めた最初の年にお揃いで買った毛糸の手袋をつけた。私が桃色で、あの人が青だ。
 もう一度、隆志が寝ている事を確認して、私は、玄関へ向かった。