【短編】JEWEL



その時だった。


――バンッ

締まりかけたドアの隙間に手が入り、ドアが再び開いた。


驚いたあたしが、顔をあげるとそこには必死な顔をした大智がいたんだ。


「忘れ物」


そう言って、手渡されたポテトチップス。


はぁ?

忘れ物って、これは大智にあげた物。

それが何で忘れ物になるわけ?


「はいはい、どうも」


何か言い返せば、また言い合いになって、あたしが負ける。


そう思ったから、適当にあしらった。

 
それなのに、受け取ろうとしたポテトチップスを放さない大智。


何? 一体、何がしたいのよ。


あたしは手を放し、


「欲しいなら、あげるけど」


そう呟いた。


「別に……いらね」


なら、サッサッと渡せばいいのに。

まじ意味わかんない。


大智の放したポテトチップスが、やけに重く感じた。