bloody mary


待つこと十数分。

もう一刻も早くこの拷問空間を脱出したいのに、菜々はまだフィッティングルームから出てこない。


「お客サマー、いかがデスカぁ?」


「ハイ… ハイ…
でも… こんなの私…」


どうやらまた悪いビョーキを発症したようだ。

マリーはズカズカとフィッティングルームに近寄り、店員を押し退けてカーテンを開け放った。

中では、とっくに着替え終わっていた様子の菜々が、驚きに硬直している。


「ふぅん…
似合ってンじゃねーか。」


鏡に映る菜々を頭から爪先まで無遠慮に眺め回したマリーが、唇の端を歪めて言った。

それを聞いた菜々の白い肌が、瞬時に色づく。

口元を綻ばせて。
やっぱりへの字に曲げて。

瞳を輝かせて。
やっぱり曇らせて。

結局菜々は、小さな手でワンピースを握りしめて俯いてしまった。


「私… 私がこんな…
やっぱり… 私なん」


「おまえに、似合ってる。」


今にもしゃくりあげそうな震える声を、低い声が強く遮った。