この俺に、女子的買い物に付き合えと?
こんな目つきの悪い男に、女子で溢れかえる空間に行ってこいと?

イヤガラセ?
イヤガラセだよネ? 確実に。

ムリムリ。
ナイナイ。
あり得ねぇから。

マリーはブルっと身体を震わせてから、床を拭く菜々を見下ろした。


「買い物は中止だ。
今度、アンジーと行け。」


「あ… ハイ。」


イイお返事。

一瞬マリーを仰ぎ見た菜々は、すぐに視線を床に戻してコーヒーの後始末を続けた。

何事もなかったかのように。

だが彼女の揺れる瞳を、マリーが見逃すはずはなかった。

本当は、楽しみにしていたのかも知れない。
マリーが起きてくるのを、ずっと待っていたのかも知れない。

でも、菜々はそれを言わない。
いや、言えないのだ。

マリーは項垂れ、溜め息を吐いた。


「やっぱ、中止は中止だ。
着替えてくるわ。」


「え… どうして…」


「鼻血出たから。
運命にゃ逆らえねぇンだよ。」


イヤな運命の啓示だな、ソレ。