あら?
なんでこのコ一人なの?

コーヒーを用意しに菜々がキッチンに向かうが、ソコにアンジェラがいる気配はない。


「鼻血は気にすンな。
アンジーは?」


「あのぉ… 急用ができたって…
それで、コレ…」


部屋を見回しながら訊ねたマリーにコーヒーの入ったマグカップを手渡した菜々は、おずおずと一枚の紙を差し出した。

アンジェラからの手紙だ。

てか、すぐに話ができる環境で手紙て…
心までオトメと化したか。

マリーは苦笑した。

マグカップを傾けながら、オトメからの手紙に目を通す。

『ごめーん、マリー。

用ができたから、菜々ちゃんと二人で買い物行ってきて。
予約してある美容院はココ。
菜々ちゃんに似合いそうな服があるショップはココ。

じゃ、ヨロシク☆
          Angela』



ぶっっっ

マリーは勢いよくコーヒーを噴き出した。

慌てる菜々の声が微かに聞こえる。
タオルで自分の胸元や床を拭く気配をボンヤリ感じる。

全てが遠い世界のような感覚に陥りながら、マリーはコーヒー色に染まったご丁寧な地図つきの手紙を凝視したまま硬直していた。