ジリジリ逃げる。
ジリジリ迫る。


「は?
そりゃ、日本で育ったンだろうとは思ってたケド…
おまえ、日本人なの?
そんな顔して?」


「日英ハーフなンだよ。
なんで日本育ちだなんてわかった?」


ジリジリ逃げる。
ジリジリ迫る。

って、もう後がナイ?!

眉を顰めたマリーは大きな手でアンジェラの顔を押さえ、ブレーキをかけた。


「イイ加減、近ェよ。
おまえ、さっきも言ってたじゃねぇか。
ハイジとクララだよ。」


「は?」


アンジェラはアイアンクローをかけられた状態で、微かに首を捻った。

『おー、クララが立った』

ソレは、初めて聞いたセリフではない。

ある男の別宅で二人が出逢った時、アンジェラの足は潰されていた。

拷問の途中で救出されたため歩けなくなるような事態は避けられたが、完治するまでにはそれなりに時間がかかった。

不自由な車椅子生活。
苦痛を伴うリハビリ。

それらを乗り越え、感動と共に立ち上がったアンジェラに対するマリーの第一声が、『クララが立った』だったのだ。