「ねぇ、ねぇ。」


マリーの心の葛藤など知るよしもないアンジェラが、意気揚々と彼の袖を引いた。


「じゃあさ、アイツ、俺にも貸してくンない?
試したい薬、あンだよねー。」


「はぁ?」


出たよ、マッド・ドクター。
とうとう人体実験デスカ。

片眉を上げたマリーに、空気を読んで今まで貝になっていた菜々が、あるモノを握った手をそっと見せた。


「私、持ってマスヨ。
『菜々スペシャル』キリッ」


「はぁぁぁ?」


出たよ、トラップ・マスター。
てか、ドヤ顔。
そんな危ねぇモン、持ち歩いてたの?

なんなの?このコら。

真綿からハミ出てンじゃん。
緊急時に自分の身を守るどころか、参戦する気満々じゃん!

三人で『ブラッディマリーS』になる気デスカ。

全く、驚かされてばかりだ。
予測不能にも程があンだろ。

菜々とアンジェラを呆れ顔で交互に見たマリーは…


「…
クっ ハハハっ」


笑った。

鼻にティッシュを詰めたまま。
ヤンチャな少年のように。