「最初は反対したンだよ。
俺は大人だからマリーの言い分の正当性もわかるし、なによりアンタが菜々ちゃんのカワイイ罠にかかってケガするなんて、あり得ないしね。」


「…」


「でもさー…
あんまりにも真剣で、一生懸命で、健気な菜々ちゃん見てたらさー…」


アンジェラは左手で頭を掻きながら窓際に近づき、マリーの隣に並んだ。


「そんで黙認したってか?」


不満そうに眉根を寄せたマリーが、アンジェラを横目で睨みつける。

アンジェラはそんな彼の肩を抱こうとするように、背後からそっと右腕を伸ばした。


「まぁまぁ。
怒ンないでよ。
黙認っつーか、さー…」


マリーを見上げるアンジェラの微笑みは、いつも通り優しく柔らかい。

だが、今にもマリーの肩に触れんとする彼の右手に握られているモノは…

注射器だった。


「…
協力っつーか?」


笑みを深くしたアンジェラの手首が素早く動く。

キラリと光る注射針が、無防備なマリーの首筋に‥‥‥