静かに緊張感を高めていくマリーを見て、アンジェラは肩を竦めた。


「いやいや。
俺は菜々ちゃんがしてるコトには一枚噛んでたりしねーよ?」


「…」


「まじまじ。
さっき菜々ちゃんがソコから入ってきた時、驚いたもん。」


苦笑しながら立ち上がってTVを消すアンジェラを、マリーが疑いの眼でジトっと睨む。


「…なんでココにいた?
リビングの音、聞こえたろ?」


「聞こえた、聞こえた。
アンタが廊下で怒鳴ってる声も。
でも、この部屋から一歩も出ないでくれって、菜々ちゃんにお願いされてたンだヨネー。」


「は?」


アンジェラは眉を顰めるマリーに、彼が出て行った後の菜々の様子を語り始めた。

はじめの二日間は何も食べず、一言も発さず、もしかしたら睡眠すらとらずに、ずっと出窓から空を眺めていたコト。

三日目にやっと部屋から出てきたと安心したら、小さなアラームを手渡されたコト。

ソレはマリーの帰宅がわかるようドアに仕掛けられたモノで、音が鳴ったら自室を出ないでくれと頼まれたコト。

そして、なんともクレイジーな計画を聞かされたコト…