事態を飲み込めず、思考を完全にフリーズさせたマリーの目の前で、柵を登りきった菜々はベランダに降り立った。
確かソコは、室内からじゃリビングと廊下を経由しなければ行けないが、外から見れば菜々の部屋の隣に当たるアンジェラの部屋のベランダだ。
彼女の手には、太めの丈夫そうなロープ。
そのロープは上に伸び、先端についた鉤爪が上階のベランダに引っ掛かっている。
器用に鉤爪を外し、慣れた手つきでロープを巻き取っていく菜々…
どー見ても、生きてマスネ。
ソーデスネ。
ナニ?
そのロープを使って、出窓からベランダに振り子の要領で飛び移ったってコト?
この前、出られないハズのリビングから脱出したカラクリも、ソレってコト?
ナニ?このコ。
スパ○ダーマン?
イ○サン・ハント?
やっぱ未来の火影???
SUGEEEEEE!!
「な… 菜々…?
ちょ… おま、危ね…
ナニやって…」
マリーは途切れ途切れの掠れた声を喉から絞り出した。
菜々の死を突きつけられて溢れ出した恐怖と悲哀。
菜々の生を認識して溢れ出した安堵と歓喜。
渦巻く感情の激流に翻弄されて もういっぱいいっぱい。
瞬きもせず菜々を見つめるマリーの顔は、まるで迷子になった子供のようだった。