震える瞼をゆっくり上げる。

さぁ、その眼に、その胸に、刻みつけろ。

罪の烙印を。
復讐の焔を。

愛しい人の亡骸を…

亡骸…を‥‥‥?


(‥‥‥‥‥あら?)


マリーは瞬きを繰り返した。
眼球をせわしなく左右に動かして、あるハズのモノを探す。

目に映るのは、街路樹が立ち並ぶアスファルトの道路。
ウォーキングに勤しむオバチャンと、それを追い越していく乗用車…

あらら??

亡骸、ナイよ??

ドコいったの?

ココ、人体が粉々になるほど高い場所じゃねーよ?
マンションはラピュタじゃねーンだよ?

どーなってンだ???

カシャン…

茫然と階下を見下ろすマリーの耳に、横から微かな金属音が聞こえた。

首を捻り、無意識にソチラに視線を送る。

混乱のため、焦点が定まらないマリーの瞳に飛び込んできたのは…


(菜々…?)


菜々だった。

よいしょ、なんて小さく呟きながら、出窓の隣に位置するベランダの柵をよじ登る、菜々だった。