「構いません!」


キッパリと言い切った菜々が身を翻し、ドアの向こうに姿を消した。

どうやらこの程度の脅しは通用しないようだ。
てか、菜々ちゃんてば免疫ありすぎて、メシ抜きくらいじゃ効き目なさげ。

でもソレ以上のお仕置きなんて とてもできねェェェ!!

となると、残された手段は一つだけ。

マリーは頭を掻きながら、閉じられたドアを見つめた。


(実力行使には、実力行使ってか…)


力技で取っ捕まえて、武装解除させるしかない。

天井を仰いで溜め息を一つ。
マリーは菜々の部屋に向けて足を踏み出した。

途端にドコからともなく飛来するハサミ。
ラグに隠れて足元を狙うくくり罠。
跳ね上がってくる板の先端に取りつけられた包丁。

その他、諸々。

なんてハイクオリティーなトラップの数々。

仕事でも、こんなに神経磨り減らしたコトねぇよ?


(…スゲぇ女…)


なんとなく緩んでしまう頬を、意識的に引き締める。

精神を研ぎ澄まし、全身をバネにして、全てのトラップを潜り抜けたマリーは、菜々の部屋のドアノブに手をかけた。