いつまでも片足を上げたまま突っ立っているのは、サスガにキツい。

マリーは足を自室側に戻した。

だが、見開いた両目は廊下の床から逸らさない。

てか、逸らせない。

扉を開け、第一歩目を踏み出すであろう場所にビッシリと敷き詰められた画鋲。
ご丁寧に、全ての針は上を向いている。

画鋲ゾーンをグルリと囲むように撒かれた水。
その端には、切られて銅線が剥き出しになった電気コードがセッティングされていて‥‥‥

ナニコレ、ナニコレ───??!!

罠じゃナイ?!
画鋲に気づいて「おっと」なんて大股で踏み出しても、電気でビリビリー★みたいな二段構えの罠じゃナイ??!!

ナンデ家の中に罠が??
こんなの、昨夜はなかった…


「こんなんじゃダメか…」


危険極まりない床を凝視したまま硬直するマリーの耳に、溜め息混じりの声が聞こえた。

弾かれたように顔を上げると、廊下の曲がり角には、菜々。

水溜まりから伸びるコードのプラグ部分を持った、菜々。

うん。
その角の下に、コンセントがあったヨネ、確か。

オメェの仕業か。


「…殺す気か?」


マリーは鋭い視線を菜々に向けて、低く唸った。