ギリリと奥歯を鳴らしながら、般若は呻く。


「なによ…
アンタにナニがわかるって」


「わかるよ。
アンジーはバカだからな。
それに、人殺しは俺だ。」


般若の呻き声を遮って、マリーが冷ややかに言い放つ。

目の前に突き出された銃口を見て。
マリーの怒りを秘めた昏い瞳を見て。

女は生まれて初めての敗北を悟った。


「男ナメてンじゃねーゾ。」


ガァン…

衝撃を全身で受け止め、女は仰け反る。

最期に聞いたのは、いったい誰の言葉だったのだろう。

金目当てで結婚した女を心から愛してくれた、年の離れた夫の?

盲目的に女を信じ、ナニも知らないまま殺され、汚名を着せられた警備員の?

全てを知りながら、全てを奪われながら、それでも女を庇おうとした『安藤くん』の?

騙し、利用し、用がなくなればあっさり切り捨ててきた、たくさんの男たちの?

それとも…

欺瞞と裏切りを重ねて生きてきた女を断罪する、神の声?

答えは出ないまま、女の意識は闇に沈み…

そして、消えた。