住人は押入れに転がる子供を、値踏みするように見た。
男の言う通りかもしれない。
闇売買の事情なんて知らないしこの男がどうしてそんなコトに詳しいのかもわからないが。
確かに商品として見映えが悪すぎる。
だが、もう少し食わせれば…
もう少し小綺麗にすれば…
住人の子供に向ける眼差しもその考え方も、血を分けた我が子に対するモノではない。
まるで家畜に対する…
「…チっ」
考えを巡らせる住人の顔を眺めていたマリーが、不機嫌そうに舌打ちした。
「もうイイわ。
おまえ、なんかムカつく。
この話はナシだ。」
「え?!」
目一杯の焦燥感を凝縮させた住人の短い叫びを無視して、マリーは再び持っていた鞄の口を開けた。
ソコに蹲る黒い塊に手を伸ばす‥‥‥
「待ってくれ!!!」
甲高い悲鳴を上げた住人に、マリーは視線を移した。
鞄を開けたマリーの行為を、勘違いしたのかも知れない。
住人は身体ごと座卓に覆い被さり、必死の形相で札束をガードしていた。



