女はまた口角を上げた。
だが、目が笑っていない。

人を蔑むような、冷たい微笑。

そんな顔もするンだね。

そうやって冷ややかに笑いながら、俺を、そして…


「アナタはご主人を殺した。」


アンジェラは女から目を逸らさず、キッパリと言い切った。

その言葉は、やけに寂しく部屋に響いた。


「ご主人を殺して、口封じに俺を殺して。
ついでに遺書でも偽造して、俺に罪をなすりつけちゃうつもりだった?」


「…」


「ビックリしたでショ。
自殺したように見せかけて崖から突き落としたハズなのに、朝になったら死体が消えてンだもん、ね。」


「…」


「あー、そう言えば、特別室付きの警備員クンは元気?」


タバコを指先に挟んだまま、女がソファーから立ち上がる。


「そう…
どうしてわかったの?」


アンジェラはそれを見上げながら、屈託なくニコリと笑った。


「全部推測だよ。
考える時間は、イヤってほどあったから。」