「菜々。」
マリーの低い呼び掛けに、菜々の頬も引き締まる。
「俺は、ドッカのバカに連れ去られたアンジーを奪い返しに行く。
相手は複数。
いきなり殴りつけて、拉致するような連中だ。
それでも、来るか?」
「ハイ。」
「どんな状況になっても、俺の言うコトを忠実に守れるか?」
「ハイ。」
菜々はマリーの目を真っ直ぐに見つめ、真摯な表情で頷いた。
迷いのない、素直なお返事。
一皮剥けても、やっぱり菜々は可愛い。
ちょっと安心したわ。
「じゃ、乗れ。」
「ハイ!」
嬉しそうに顔を輝かせた菜々が助手席側に走り、ドアを開けて乗り込んでくる。
ノートパソコンを膝に置き。
シートベルトを締めて。
隣のマリーを見て、一言。
「行きましょう!!」
オメェがボスか。
唇の端を歪めてこっそり苦笑したマリーは、再びアクセルを踏み込んだ。