「だが金は俺が出してやる。」
マリーは座卓の上の空き缶を、全て床に払い落とした。
転がった缶が立てた派手な音に身を竦ませる住人を尻目に、鞄から出した札束を五つ、フラットになった天板に積み上げる。
「コレで、このガキを売れ。」
「は…」
感情の読めないマリーの顔を見て。
目の前に積まれた札束を見て。
住人は生唾を飲み込んだ。
ナニイッテンノ?
ナニイッテンノ? この男は。
子供を売る?
そんなん出来ンの?
そんなんアリなの?
だが現実に、手の届くところに大金が…
(アリだろーが、こりゃ。)
住人はビッグチャンスを前に、必死で頭を働かせだした。
もっと値段を吊り上げろ。
こんな若造にナメられンな。
有利に交渉を進めろ。
主導権を握れ。
だが… いったいどーやって?
考えた末に住人は、慣れ親しんだ唯一の武器を使った。
「バカにしてンのか、ゴラァ!!
そんなはした金で、ガキを売るワケねぇだろーがぁぁぁ!!」
要するに、怒鳴った。



