‥‥‥おおぅ…

完璧な状況説明…
さっきのババァ共なんかより、よっぽど使えンじゃねーか…

だが、ソレだってどーでも…
どーでも‥‥‥

どーでもイイはずなのに、どーでもイイとはとても思えず、マリーは菜々の顔をマジマジと見つめた。


(菜々‥‥‥だよな?)


うん。菜々だ。
でも、違う。

かと言って、マリーを挙動不審に陥れるアヤシイ菜々ではない。

いつも、慎重に選んだ言葉を恐る恐る紡ぐ桜色の唇は、固く結ばれている。

いつも、どこか不安そうに揺れる瞳は、何者も跳ね返すかのような強い光を放っている。

いつも、薄く染まって柔らかく緩む頬は、厳しく引き締まっていて‥‥‥

マリーは背筋から腰にかけてゾクリと走るナニカを感じ、生唾を飲み込んだ。

あどけない少女の殻を脱いだ凛々しいイイ女が、強い眼差しを逸らさぬまま口を開く。


「ナニカあったンですね?」


少しの逡巡もない、毅然とした物言い。

人の顔色ばかり伺っていた菜々は、ソコにはいなかった。

おそらくコレが、本来の彼女。

緊急事態を察知し、それに挑もうとする覚悟が、彼女の秘めていた資質を開花させていた。