bloody mary


開け放たれる押入れ。

下段に転がる、浅い呼吸を繰り返す子供。

男は汚い畳に膝を着き、その子の額に手を当てた。

驚くほど熱い。
意識もないようだ。

男は静かに立ち上がり、座り込んだまま言葉を失う住人を見下ろした。


(ダレだ? コレ…)


住人は目を瞬かせて男を見つめた。

ピンと伸びた背筋。
前に突き出ていた肩も元の位置に戻り、見事な逆三角形を作っている。

整った顔の造形を霞ませる、狂暴な獣のような眼光と、酷薄そのものの薄い唇。

気の弱そうな、腰の低そうな、猫背の役人はドコに消えた?


「…
助成金の… 書類は…」


住人は、掠れた声で茫然と呟いた。

我ながら、間抜けな質問をしているとわかっている。

こんな男が、役所勤めのはずがない。
こんな危なそうな男が、まともな職についているはずがない。

案の定…


「助成金?
知るかよ。」


唇の左端を歪めた男…
マリーは鼻で笑った。