自分自身すら見失った俺は、日本を逃げ出した。
世間の冷たい目や、警察や、俺を殺したがっている人から逃げたかったわけじゃない。
俺は、今までの俺から逃げ出した。
姿や名前、性別すら偽り、別人のように振る舞って。
空っぽのままで。
ある日、実体のない幽霊のようにフラフラと生きていた俺は、一人の男と出会った。
マリーだ。
彼は『優しい』とか『親切』とかいう言葉とは無縁の、冷酷な殺し屋だった。
今度こそ、死ぬンだろう。
そう思った。
なのに彼は、俺が傍にいることを許した。
ドコのダレかも知らないまま、空っぽの俺の存在を許した。
無性にあたたかかった。
ただただ、心地好かった。
俺は彼のぬくもりに甘え、偽りの姿のまま傍に居続けた。
だが数ヵ月前、驚くべきことが発覚した。
彼は、俺の嘘を見抜いていた。
それも、出会ったその日に。
『ナゼか帰る場所のない、犯罪被害者であるか弱い女』
ではなく、
『名前も出身地も性別すら嘘っぱちの、アヤシすぎる男』
と知っていながら、彼は俺を傍に置いていたのだ。
うん。
頭オカシイ。
あり得ないヨネー?



