でもその時の俺には、過ちだとは思えなかった。
愛のない結婚生活から彼女を救い出すことこそ、正義だと思えた。

その後も逢瀬を重ね、身体を重ね、思いを重ね…

彼女の夫の退院、即ち自由に会えなくなる日がくる直前、

『いつか、きっと』

俺は彼女に約束した。

彼女は微笑みながら頷いた。

だが、夫が退院することはなかった。

退院日の前日、急死したのだ。

命が危ぶまれるような症状ではなかった。
医療ミスが起こるような治療すら、していなかった。

ただの骨休め目的の入院だったのに…

検死の結果、彼女の夫は毒殺されたということが判明し、病院関係者にも警察による徹底した事情聴取が行われた。

そこで浮かび上がってきたのが 俺と彼女の許されない関係…

いや、少し違うな。
俺が、彼女を、一方的に追い回しているという話にすり替わっていた。

ドコでダレがナニを見たのやら 院内の警備員たちの間で噂になっていたらしい。

俺は拘留され、厳重な取り調べを受けた。

俺には患者が毒殺された日のアリバイがなかった。

と言うか、証明できなかった。

彼女の立場を考えると、
『デートの約束してマシタ☆』
なんて、とても警察には言えないしネ。